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アンプ設計 2SC1815 2024/6/30

本文目次

本文以外目次
1.トランジスタの定格
2.アンプ設計方法
3.動作確認


本   文
1.トランジスタの定格
 以下に東芝のデータシートから抜粋しています。
○ 低周波電圧増幅用
○ 励振段増幅用
・ 高耐圧でしかも電流容量が大きい。
: VCEO = 50 V (最小), IC = 150 mA (最大)
・ 直流電流増幅率の電流依存性が優れています。
: hFE (2) = 100 (標準) (VCE = 6 V, IC = 150 mA)
: hFE (IC = 0.1 mA)/hFE (IC = 2 mA) = 0.95 (標準)
・ PO = 10 W 用アンプのドライバおよび一般スイッチング用に適しています。
・ 低雑音です。: NF = 1 dB (標準) (f = 1 kHz)
・ 2SA1015 とコンプリメンタリになります。(O, Y, GR クラス)
注: 本製品の使用条件 (使用温度/電流/電圧等) が絶対最大定格以内での使用においても、高負荷 (高温および大電流/高電圧印加、多大な温度変化等) で連続して使用される場合は、信頼性が著しく低下するおそれがあります。
弊社半導体信頼性ハンドブック (取り扱い上のご注意とお願いおよびディレーティングの考え方と方法) および個別信頼性情報 (信頼性試験レポート、推定故障率等) をご確認の上、適切な信頼性設計をお願いします。

注: hFE (1) 分類 O: 70~140, Y: 120~240, GR: 200~400, BL: 350~700
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2.アンプ設計方法
(1)設計回路


(2)設計値
 a.アイドリング電流(Ic)
  無信号時のコレクタ電流Icの値で今回 2(mA)とする。
 b.電圧増幅率(Av 電圧取り出し箇所はコレクタ)
  VCCの電圧を5(V)近辺にしたいので、最低限の値1倍以上の2倍(6db)とする。
 c.入力電圧(vi)
  1(Vp-p)とする。
 d.入力周波数(fi)
  200(Hz)以上とする。

(3)トランジスタの特性値
 a.トランジスタ最大増幅率(hfe)
   データシートから hfe=100
 b.ベースーエミッタ電圧(Vbe)
   データシートから 0.6(V)とする

 c.エミッタ電圧(Ve)
  1(V)~2(V)の間に設定する。今回は1(V)とする。
 d.CE電圧分配余裕電圧(Vm:margin)
  今回は0.5(V)とする。

  余裕電圧(Vm)の説明図
   (下図は3(1)項で使用したシミュレーション図)
   信号が入力されvcとveの間の裕度を示す。

 eベース電流倍率
  Ib1/Ib3の値で、Ib3が流れてもベース電圧を安定させるため、この倍率は大きい方が良い。
  今回は10倍を選定する。

(4)計算方法
 a.Reの計算
  Re=Ve/Ic=1.0(V)×1,000 / 2(mA) = 500(Ω)
  抵抗は24シリーズを使用するため、500(Ω)の値がありません。
  一番近い値510(Ω)を選定します。
 b.Rcの計算
  Rc=Av×Re=2×500(Ω)=1(kΩ)
  1(kΩ)があるので、この値を選定します。
 c.Avの計算
  Av=Rc/Re=10001/510≒1.961≒2.0倍
 d.Veの計算
  Ve=Ic×Re=2×510/1000=1.02(V)
 e.Vcの計算
  Vc=Ic×Rc=2×1000/10001=2.00(V)
 f.veの計算
  ve=vi/2=1/2=0.5(V)
 g.vcの計算
  vc=Av×ve=2×0.5=1(V)
 h.Vccの計算
  Vcc=Ve+ve+Vc+vc+Vm=1.02+0.5+2+1+0.5≒5(V)
  Vccを5(V)とする。
 i.ib3の計算
  Ib3=Ic/hfe=2(mA)/100=20(uA)
 j.ib1の計算
  Ib1=Ib3×(Ib1/Ib3 回路安定用)=20(uA)×10=200(uA)
 k.Vbの計算
  Vb=Ve+Vbe=1+0.6=1.6(V)
 l.Rb2の計算
  Rb2=Vb/Ib1=1.6/200(uA)=1.6×1,000,000/200=8(kΩ)
  抵抗は24シリーズを使用するため、8(kΩ)の値がありません。
  計算値より大きい一番近い値8.2(kΩ)を選定します。
 m.Rb1の計算
  Rb1=(Vcc-Vb)/Ib1=(5-1.6)/200(uA)=17(kΩ)
  抵抗は24シリーズを使用するため、17(kΩ)の値がありません。
  計算値より小さい一番近い値16(kΩ)を選定します。
 n.Vbの確認
  Vb=Vcc×Rb2/(Rb1+Rb2)=5×8.2/(16+8.2)=1.69(V)
  k項で求めたVbより大きいのでこれ以上Rb1、Rb2の調整はしない。
 o.C1の計算
  C1=1/(2π×Rb2×遮断周波数)=1/(2×3.14×17000×200)=0.1(uF)
 p.fiの確認
  f=1/(2π×Rb2×C1) =1×1000/(2×3.14×17×0.1)=194.2(Hz)
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3.動作確認
(1)シミュレーション
 Ltspiceでシミュレーションを行った。 入力は2(kHz) 1(Vp-p) 表示は起動~[ 1div=0.01(s) ]

(2)実動作確認
 a.トランジスタの特性確認

 hfe=249 (vbe=0.73 Ic=7.4mA)

 b.作成した回路


 c.各端子波形


 d.周波数特性(ボード線図)


 ボード線図から判るように周波数300Hz付近から出力が0db以上になって2kHzぐらいから6db程度の増幅になり1MHz以上から増幅ゲインが下がっていることがわかる。
 設計では200Hzから増幅するようC1の値を決めたのですが、若干周波数が300Hzと高くなりました。
 この周波数を低くしたい場合はC1の値を大きくする必要があります。
 また周波数が1MHz以上から増幅率が下がるのはトランジスタのミラー効果というもので、トランジスタの高周波の増幅特性を決めています。
 つまりこの周波数を上げたい場合はトランジスターを選定し直す必要があります。
 ここで使用している2SC1815の電気的特性の内トランジション周波数fTを見ると80MHzになっています。
 このトランジション周波数とは入力信号の周波数を上昇させて言った場合のhFEが1になる周波数を言います。
 アンプとして使用できる周波数はこのトランジション周波数の1/5~1/10程度(2SC1815の場合は16MHz~8MHz)と思われる。
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