電子工作 元に戻る

BH_CurveTracerの工作 2024/7/2

本文目次

本文以外目次
1.なぜB-Hカーブトレーサーが必要か
2.B-Hトレーサーの構成
3.B-Hトレーサーの改良



本   文

1.なぜB-Hカーブトレーサーが必要か
(1)コイル(コア含む)の特性について
起磁力H(A/m)と磁束密度B(T)の間には
  Hμ=B
と言う比例関係にある。
μ(H/m)は比例定数で透磁率と言い
  μ=μ0 ・μγ
  μ0は真空中の透磁率で
  μ0=4π×10-7
  μγは比透磁率と呼ばれ空気中は1で磁性材は1以上になる。

1図トロイダルコアの磁場・磁束密度他
(2) B-H曲線
曲線はa点から始まりb→c→d→e→f→g→h→c・・・の順で遷移する。
B-H曲線からコイルに流れる電流を増すとμの傾き小さくなって0になったBの値を飽和磁束密度という。
μが0になった場合に影響するのが、コイルのインダクタンスだ。

(3)コイルのインダクタンスL は
L=μ・N2/C1(H)
 C1=ℓe/Ae
 ℓe=実効磁路長
 Ae=実効断面積


2図B-H曲線

(4)B-Hカーブトレーサーが必要な訳
 (2)項の式からμが0になるとインダクタンスが0になり、短絡状態になることが判る。
 通常トロイダルコアに巻いたコイルを購入した場合上記特性が示されているが、私が購入する物は安価な物が多く、特性が示されていない。
 漏れ磁束を出来るだけ小さくするため、コイルはトロイダルコアに巻く物を想定している。
 このため、コイルは磁場を1次巻き線で作り、2次巻き線により磁束密度を測るB-Hカーブトレーサーによりコイルの特性を確認しなければ安全性を担保出来ない。
[目次に戻る]


2.B-Hトレーサーの構成
 コイルN1に流れる電流を測定し電流が流れる事によりN1部分に磁場を発生させ磁束がコアの磁束密度分通り、それをコイルN2で測定することによりB-Hの関係が判るはず。
(1)回路図
 今回は簡単なものを仮作成することにした。
 回路は電子負荷の様な・・そのままです。
 マイナス側が飽和しない波形になってもプラス側だけが飽和すれば測定は出来る。
 コイルにマイナス側をかけれないので、第一像限だけのB-H曲線が見れるのでOKか??
 このままでは直流の重畳された特性になる可能性もあるが、その時は電流が少なめになる方向だからOKとしよう。
 将来はマイナス側も配慮した回路とする事で、先に進める!

(2)回路の概略説明と作成したもの
J1はコイルに流れる電流の基準電圧を入れます。
 U1AのオペアンプはR5の電圧よりJ1の電圧高い場合はQ1のゲートに高い電圧を印加します。
 その電圧でQ1のMOSFETがドレンからソースへ電流を流します。
 その電流でR5の電圧がJ1より高くなった場合は、Q1のゲートに低い電圧を印加し、Q1のドレンーソース間の電流が減少しJ1とR5の電圧が同じになる事でQ1のゲートに加わる電圧は安定します。
 なおコイルに電流を流す電源CN1と制御電源CN2を別にした理由はQ1の消費電力を少なくするため、CN1電圧を出来るだけ測定に支障ない範囲で下げたいのでCN1とCN2を別々にした。
CN2制御電圧はQ1のゲート電圧が10(V)程度で最大使用となるようなのでLM358の損失を考え12(V)程度にしいる。
■作成した仮の測定装置

(3)動作確認 失敗!
・MOSFETの温度を監視しながら測定を行った。
・J1の波形は周波数1kHzの正弦波です。
   波形の電圧は下端0(V)、上端1(V)
・CN1電圧2(V) 電流Max制限 4(A)に設定
・CN2電圧12.6(V) 電流1Max制限 0.2(A)に設定
・上段上のオシロには下記信号を入力しています。
信号内容 No 線色 レンジ オフセット
①J1制御信号 3 ピンク 500mV 0V
②ゲート信号 1 黄色 2V 0V
③J2電圧(電流波形) 2 水色 50mV 0V
④ゲート信号(AC拡大) 4 1V oV
なお②×2倍の交流分電圧を④で表示しています。
■試験状況写真
■T1の1-2間を短絡した場合
①の信号はP-Pで1(V)を示しています。
③の信号はP-Pで0.1(V)=1(A)を示す。
 なお①J1制御信号ピンクと③J2電圧水色は同じ波形になっています。
●①の信号と③の出力の計算方法
 ①の信号は1/10=1(V)を0.1(V)にして②と比較
 ③の信号は電流1(A)に対し0.1(V)になる。
 結果①=1(V)で③は1(A)の電流が流れる。
●②のゲート信号は制限波ではありませんが、キチンと出力を制限波にしているのでOKかな?
■測定波形 T1は短絡
■T1の1-2間にコイルを入れた場合
 コイル黄色白の21-13-6 25回巻き 27uF を接続した場合に発振した様な状態を示した。
 ゲート信号の黄色や青より出力の水色の波形が若干遅れて動作している。
 ゲート信号を遅くしてやれば良いのかも?
 コンデンサを入れて見よう
■測定波形 T1はコイル
[目次に戻る]


3.B-Hトレーサーの改良
(1)改良回路図
 LM385の1-2間にC2コンデンサ 1000PFを入れる。


(2)変更状況
LM358の②-R4のJ2側短絡線を撤去する。 LM358の①-②にC2を入れ、LM358の②-R4のJ2側にR7をいれる。

(3)動作確認
ゲート信号が遅くなった為J1信号よりJ2電圧が遅くなった。 ■測定波形 T1は短絡
コイルを入れた状態で前回の様なハンチングは起こっていない。 ■測定波形 T1はコイル
コイルを入れた状態でJ1信号を30kHzに変更したがきれいな制限波形になっている。
■J1に30kHz 1(V)
コイルを入れた状態でJ1信号を43kHz以上にすると正弦波が崩れてしまう。 ■J1に43kHz 1(V)
B-Hカーブを見るため、
No1をJ2に接続
No2をJ3に接続

J1には10kHzを入れている。
■J1に10kHz 1(V)
X-Yモードに変更しB-Hカーブを見る
X軸がNo1
Y軸がNo2
今回のB-Hカーブトレーサーは簡易型のため負側がないので、X軸は正側だけが表示されている。
■J1に10kHz 1(V) オシロはXYモード

続いて改良?かいったん休憩
[目次に戻る]