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水車模型を作る 2024/7/2

本文目次

本文以外目次
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.工程別説明
Ⅲ.各パーツ別説明
Ⅳ.写真集



本   文

Ⅰ.はじめに
 この水車モデルは2014年末から開始し2015年6月の半年間で完成しました。
 このモデルを3Dプリンターを使用して作成する事になったのは2009年FDM(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層)法の3Dプリンターの特許が期限切れとなり、2014年には100,000円以下のプリンターが販売される様になりました。
 そこで、2014年中旬から3Dプリンターを扱うため図面作成~プリントアウトまでの情報を揃えて11月に3Dプリンターを購入し水車のモデル作りを開始しました。
 この時3Dプリンターの材料が高価だったので、3Dプリンターの標準外品(社外品)の使用方法や材料の比較(コスト・品質)の検討も行いました。
 発電所の水車モデル作成計画を立て完成を約6ヶ月後としました。(水車メーカーの了承を得て作成しています!)
 このため公私の内、私の時間のほとんどを割いて作成することになりました。
 モデルはケーシング及びガイドベーン、水車、ドラフトおよび床壁の一部を作成する事にしました。
 モデルを作成するには、大きく分けて、5つの工程で作成しました。

 この5つの工程で、アセトンによる表面加工や塗装作業のためのブースも作成しました。
 ブースの記録は別で紹介したいと思います。

 作成した物が上の写真です。 このモデルは寄贈(迷惑だったかも?)しました。
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Ⅱ.工程別説明
 1.CADソフトで3Dの作図
 2.3Dプリンターで製作
 3.溶剤による表面加工
 4.床、壁の作成
 5.塗装
 6.各工程の時間ほか
の説明をします。          [目次に戻る]
1.CADソフトで3D作図
 3D CADについては通常の平面CAD作成に加え高さ方向についての作図が加わった操作で作成します。
 初めて3Dの作図をした事もあり、作図には約80時間を要しました。
 作図の中では、ドラフトが直角に曲がる部分やランナのバランスパイプや羽根の部分が難しく、また他の部分でも色々な作図の仕方が有ることが判り夫々が知識になりました。
左図が完成予定の図です。大きさは(長さ)675×(奥行)156×(高さ)260(mm)です。
下図はランナ、ガイドベーンを除いた部品図です。
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2.3Dプリンターで製作
3DプリンターはXYZプリンティングのダヴィンチ1.0により作成しました。
 製作する材料はABS樹脂(プラスチック)で、このプリンターではカートリッジ式で240m(600g:3,280円)の物が販売されています。今回は約8個使用する事になりました。
 今回3Dプリンターのソフト・ハードも勉強になりました。
 ソフトでは、3Dプリンターでプリントする指示する図(構図)により出来栄えが違う(失敗する)事も判り、大変ためになりました。
 又ハードでは。3Dプリンターによるプリント作業でも幾つかの不具合(プリンターの設計製造不良)や調整不良による失敗も有りプリントする前には、3Dプリンターの調整確認及びベットの清掃手入れを行う事が判りました。ちなみに調整手入れ1工程に必要な時間は約2時間程度ひつようでした。
 なお前段にも紹介しましたが、材料が高い為、事前に幾つかの種類で比較しました。
項目 金 額 備   考
標準品 600g  3,280円 出来栄えは最高
A社 1,000g 1,980円 温度設定の変更が必要、細かい部分の表現が悪いが使用出来そう
B社 1,000g 1,890円 温度設定の変更をしても各層の接合が悪く、使い物にならない
 純正のカートリッジにはマイクロチップ製のEEPROMが内蔵されており、純正外の物を使用する場合は、このEEPROMに記載されているデータを書き換えして使用する事が必要となります。
 今回は出来栄えを重視するため、純正品を使用する事にしました。 作成写真は個別説明で紹介します。
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3.溶剤による表面加工 (処理するのに焦り、写真を撮り忘れました!あしからず!)
 右写真は溶剤や塗装などの臭いが部屋に充満しない様排気してくれるブースです。
 アセトンによるABS樹脂の表面加工をする事にしました。
 始めは塗装ブースの中にガラスケースを入れ、そのガラスケースの中にアセトンを入れたオープン容器とABS樹脂を収納し蓋をして1時間ほど放置したのですが、あまり効果が無いため、アセトンを筆に染み込ませ、その筆でABS樹脂表面を拭きました。
 ある程度の効果が見られたので、ドラフトおよびケーシングでその処理をしました。
 またランナについては筆で拭いても効果が無い(凹凸が大きい事と筆が入らない部分が多い)ので、アセトンを入れたビーカーの中に漬け込みました(約30秒)。
 だいぶん表面が溶け、『テカリ』が見える様になりました。(ただ、ランナは後で発覚するのですが、真円になっていないため、旋盤を使用してヤスリで削ったところ、その『テカリ』は無くなってしまいました!
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4.床、壁の作成
 最初は3Dプリンターを使用して作成しようとしたのですが、金と時間から、5mm厚の発泡スチロール素板を加工して作成しました。
 発泡スチロールの素板は728mm×1,030mmの板を使用し、現物合わせで作成しました。
 作成した後、塗装をしました。
 しかしボードの表面はツヤが有り良いのですが、断面の表面がざらざらなため、塗装しても明らかに断面が判別できるので、パテ埋め処理をして再塗装しました。(白くなっているのがパテ埋め個所)
 また写真には無いですが、ドラフト・ケーシングを入れた後の隙間はシリコンでシール処理しました。
 後ろはコンクリートを壊した様に作成し、中のドラフトが見える様にしています。
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5.塗装
 塗装は右写真の様なブースを作成し、部屋の中にシンナーなどの
ABS樹脂と発泡スチロール素板を使用しているので、油性と水性の2種類を使用しました。
 色は水性:グレー
 油性:白、黒、つや消し黒、黒銀、水色、ラフィネオレンジ、黄色
 塗装の道具はスプレーガンを使用しました。
 最初はプラモデル用の0.3mm穴スプレーを使用したのですが、うすめ液の比率が悪く、出なかったので、1mm穴(自動車など様のガン)を使用したところ時間効率が良かったのですが・・・・
 何度もやり直ししました。(とっかかりに時間が掛かりました!)良い経験になりました! 下地は白が良い!
 何回も塗装した。今でもうすめ液の使い方がへた! 温度や色によって比率が違う!
 塗装を薄めているときはブース外で実施したため、臭いがきつく頭が痛くなりました!(ブースでやる様に作業性を良くするようブースを改造したいと思います(現在はサンドブラストも出来る様底面が逆四角錘になっているので、物が置きにくいので、小さな棚を作成したい!)
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6.各工程の時間ほか
1. CAD図作成 2014.12 ~2015.2 80時間 雪かきでなかか時間が
2. 3Dプリント 2015.03.06~2015.04.18 145時間 夜通し作成:夜間監視無し
3. 塗装ブース作成 2015.03.06~2015.04.18 47時間 3Dプリント中に作成
4. 表面処理 2015.03.29~2015.04.25 38時間 表面処理試行含む
5. 塗装 2015.05.03~2015.05.24 35時間 マスク・パテ処理含む、乾燥中は床壁作成
6. 床・壁作成 2015.05.01~2015.05.24 44時間 塗装含む
7. 名称板作成 2015.05.09~2015.05.24 7時間 プリント~塗装まで
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Ⅲ.各パーツ別説明
 1.直管部
 2.上部ドラフト
 3.ケーシング作成
 4.下カバー
 5.上カバー
 6.ランナ
の説明をします。          [目次に戻る]
1.直管部 3D printing time 15時間44分
 直管部はマンホールとその蓋を記載する方法をどうするか多少考える必要が有りました。
 後から考えれば、簡単な事だったのですが、参考書も無く作成していたので、下記にその概略方法を記載しておきます。
 とにかく、いく幾度も作図のX/Y/Zの方向を替え作図をしています。マンホールの蓋と一緒にプリントしましたが、案外綺麗に出来上がりました。
今回作成したマンホールの内蓋の概略作成方法を記載する。
(1) 鉄管及びマンホールの内径線を描く。
鉄管については、肉厚をだすため、内径線と外形線を作成する。
図は水平方向が鉄管、垂直方向がマンホールの線
(2) 鉄管は外側の円筒から内側の円筒減算し、パイプ状の物を作成
(3) マンホールの内径線による円筒を作成
(4) 鉄管とマンホールをAND処理
以上でマンホールの内蓋が出来上がります。
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2.上部ドラフト 3D printing time 8時間47分


 CADの作成手順
色々な作成方法が有ると思うが、今回は下記の要領で作成した。
ラフトは円筒形を先に作りマンホールの内枠でその円筒と重なる分を残しマンホールの蓋内側を作成した。
(2) 上記の作業で上部ドラフトは無くなったのでもう一度円筒形を作成する。
(3) 四角柱のマンホールを作成し、上部ドラフトとの接合面の切断方法として、マンホールと上部ドラフトの重なっている部分以外を残し、上部ドラフトの内側に残ったマンホールは必要な部分の間で切断処理後、上部ドラフトの内側に残った物を削除した。
(4) もう一回上部ドラフトの円筒形を作成
(5) 上部ドラフトの上にフランジ部を作成
(6) 必要なパーツを全てOR処理して完了となる。

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3.ケーシング作成 3D printing time 22時間19分
 CADソフトでケーシングとスピードリング(ステーベーンが有るものと円盤だけの物を作成)を作成し、ケーシングのスピードリングと結合する部分を円盤だけの物を使用してケーシングから部分的に削除し、その後ステーベーンが有るスピードリングとケーシングを結合した物が左図です。
 そのデータをSTL形式で保存し、3Dプリンターの付属ソフトでレイヤの高さ・3D密度・シェル・速度・ラフト(基台)・サポートや密度などの設定をして処理した物が左下の写真です。
 出来上がった物のラフトやサポートなどを削除して次は表面処理をして最後に塗装をします。
 このプリントした物は2台目で下カバーが付いていないケーシングとスピードリングです!最初のケーシングは下カバーも含みで作成し失敗してしまいました。
 今回の事で3Dプリンターも簡単にCAD図面だけで出来ない事が判りました!(大きな成果として別の物に記録する事にしました!)

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4.下カバー 3D printing time 3時間22分
 下カバーを作成する方法は大きく2種類あると思われる。
(1) 外形、内径の違う円盤の集合体として作成し、最後に全体を結合する方法。
(2) 断面の形状を作成、その断面を円周上でくくる方法
 最初は(1)項の方法で作成しましたが、時間がかかり他にいい方法が無いかと考え(2)項の方法があることが判り、作成時間は飛躍的に早くなりました。
下カバーより構造は簡単でしたが、上カバーやランナバンドでその方法を活用しました。
最後に中心から300mmの場所でカットして属性をSLTにし3Dソフトに渡しました。

下カバーの下面表面の凹凸が多くフライス盤を使用して削りました。(そうとう大げさですが・・・)
削り途中 下面完成(押さえ板右下も削っている)
上部ドラフト取付面の削り完成
 塗装状態や接着効果を良くするため、フライス盤でラフィングエンドミル(4枚歯、シャンク径10mm)を使用して削り仕上をした。
 
 赤い線はレーザーでドリルの芯を示す。
 現在はY方向のみで将来はX方向も取り付けたい。
  レーザーは1mW 650nmで中国製 AliExpressで購入、
 取付金具は自作した物。
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5.上カバー 3D printing time 3時間52分
下カバー同様作成する方法は複数ある。又作成する場合は、凹凸が少ない面を下にして作成した。
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6.ランナ 水車の種類はフランシス水車です。
 クラウンとバンド作成し、その間の羽根を作成しました。羽根は1枚作成し、他19枚を18度おきにコピーして作成しました。
 作図としてはこのランナが一番難しかった様に思います。
 クラウンやバンドもいくつかの作成方法がありますが、凹凸が多いため、特にバランスパイプの作成に時間がかかりました。
 むつかしさで言えば、羽根ですが、満足の域になってません!
3Dプリンターの印刷したての様子 先に作った下カバーとランナを合わせてみました。
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Ⅳ.写真集

正面から回転します 塗装前のケーシング
ケーシングの裏側も見れる
ドラフトマンホール閉状態 ドラフトマンホール開状態 ケーシング~ドラフト拡大写真 ランナ
マンホールアクリルカバー
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